人と人で繋がる世界(コラム)
長らく海外でビジネスをしていると、取引相手からfriendと言う表現を耳にすることがある。日本語に直訳すると「友達」である。日本では仕事と友人関係はかなり厳然と区別されており、少なくとも商談や交渉に友達と言う表現は、公私混同として見なされるとして、ご法度に近い感覚が存在するし、私もそう思ってきた。
時に交渉事で、この「Friend」が出てこようものなら、すぐさま拒否反応を起こし、コイツは信用ならんと思う事さえあった。
しかし、ビジネスのみならず人生においても数ある荒波を乗り越え、歳を重ねてくると、「待てよ。」と感じることが多くなってきた。この「Friend」というワードがやけに「沁みる」のだ。
相変わらず日本の取引相手とは、いまだ「友達」という言葉を使うこと自体しっくりこないのは事実だ。それはやはり日本語独特の響きと共に文化的なイメージが強いのかも知れない。もちろん商談や交渉にもそのワードは今も私の中では使わないし、今後も使うこともないだろう。
ただ、心のどこかで、サプライヤーにせよ、お客様にせよ、スタッフにせよ、自分の中でこの「Friend」と言う感覚をより強く感じることが多くなったのもまた事実である。この感覚を大切に思う気持ちはもうなくなることはない。
人と人が繋がるビジネスには、単に取引勘定を超え、関わる者同士が共通の目的に向かって共有共創する世界がある。そこには間違いなく寄り添い合う「Friend」的な感覚がある。
2022年、世の中は未曽有のコロナ騒動の発生からもう2年半と言う月日が流れた。そしてソーシャルディスタンス、ステイホームというキーワードは人と人との繋がりを遠ざけ、その関係をますます希薄にする。
しかしだからこそ、人の心が通う「Friend」的な感覚の重要性をより浮き彫りにもした。
今後、世界はますますテクノロジーが進化発展を続け、多くの仕事はAIに取って代わられるだろう。しかし、いかなるビジネスにおいても、どの様な時代が来ようとも、このFriend的感覚が存在するところにAIが入る余地はない。